PubMed検索式GPTとは何か?医師・研究者のための使い方と注意点

生成AI

論文検索の「検索式づくり」が一番しんどい

「症例報告を書くために、類似症例を探さないと…」
「系統的レビューの検索戦略、どう組み立てればいいんだ…」

こんな場面で、PubMedと格闘した経験は誰にでもあるはずです。
私は症例報告を書くために週末を丸々使って論文検索をしていました。

MeSH termを調べて、AND/ORを組み合わせて、フィルターをかけて…。やっと検索式ができたと思ったら、ヒット数が3万件。絞り込みをやり直す日々でした。

論文を読むのは楽しいし、データ解析も面白い。でも、その前段階の「適切な検索式を作る」作業が、想像以上に時間を食うんですよね。

  • MeSH Databaseで同義語を調べる
  • AND、OR、NOTの組み合わせを考える
  • フィルターをどうかけるか悩む
  • 検索結果が多すぎたり少なすぎたりして、何度もやり直す

臨床や実験で忙しい中、この作業に時間を取られるのは正直つらいですよね。そんな人に向けた、「PubMed検索式GPT」というChatGPT内のツールが注目されています。

今回は、ChatGPTを使ったことはあるけれど研究での実用イメージが湧かない先生方に向けて、PubMed検索式GPTの実際と、医師・研究者目線での現実的な使い方を解説します。

PubMed検索式GPTとは何か

PubMed検索式GPTをひとことで言うと

あなたの研究テーマを伝えると、PubMedで使える検索式を自動生成してくれるChatGPT内の専用ツール」です。

通常のChatGPTに「糖尿病の論文を探して」と頼んでも、検索式の”形”は返してくれますが、MeSH termの精度や構文の正確性には不安が残ります。

PubMed検索式GPTは、論文検索に特化した指示(プロンプト)があらかじめ組み込まれており、より実用的な検索式を返してくれる設計になっています。

通常のChatGPTとの違い

詳しく通常のChatGPTとの違いを見ていきます。通常のChatGPTは汎用型AIです。医学論文についても答えられますが、PubMedの検索構文やMeSH termの細かいルールまでは最適化されていません。また「次に来る言葉のうち可能性が高いものを選んで生成する」という生成AIの性質上、架空の論文を作り上げる可能性もあります。

一方、PubMed検索式GPTは、

  • MeSH termを優先的に使った検索式を生成
  • フィールドタグ([Title/Abstract]、[MeSH Terms]など)を適切に配置
  • 論文検索に必要な論理演算(AND、OR、NOT)の組み合わせを提案

つまり、「PubMed用に最適化されたChatGPT」と言っていいでしょう。

ちなみに、以前「ChatGPTでPubMedの検索式を作る方法」についての記事を書きましたが、このPubMed検索式GPTを用いる方がより精度がいいと思います。

何ができて、何ができないか

続いて、このツールでできることと苦手なことをまとめていきます。

できること:

  • 研究テーマから検索式の叩き台を数秒で作成
  • MeSH termの候補を提案
  • 複数の検索戦略を比較検討するための素案作り
  • 英語論文検索の敷居を下げる(日本語で質問できる)

できないこと:

  • 100%完璧な検索式の保証(後述しますが、必ず人間の確認が必要)
  • 最新のMeSH term更新への即時対応
  • あなたの研究背景を理解した”暗黙知”の反映
  • 論文の質的評価や批判的吟味

なぜ論文検索が楽になるのか

従来のやり方:自力でMeSHを調べる

例えば「2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の心血管予後」をテーマに検索する場合、従来はこんな流れでした:

  1. PubMedのMeSH Databaseで「SGLT2 inhibitors」を検索
  2. 正式なMeSH termは「Sodium-Glucose Transporter 2 Inhibitors」と確認
  3. 「cardiovascular outcomes」のMeSH termを探す→「Cardiovascular Diseases/prevention & control」か?
  4. 検索式を手作業で組み立て:
    ("Diabetes Mellitus, Type 2"[MeSH Terms]) AND ("Sodium-Glucose Transporter 2 Inhibitors"[MeSH Terms]) AND ("Cardiovascular Diseases"[MeSH Terms])
  5. ヒット数を見て調整→多すぎたら絞り込み、少なすぎたら拡張

だいたい10分ぐらいかかるでしょうか。時間もそうですが、考えることが多い、、、。

PubMed検索式GPTを使う場合

同じテーマをPubMed検索式GPTに投げてみます:

入力(日本語でOK):
「2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の心血管予後に関する論文を探したい」

出力(数秒後):

("Diabetes Mellitus, Type 2"[MeSH Terms] OR "type 2 diabetes"[Title/Abstract]) 
AND 
("Sodium-Glucose Transporter 2 Inhibitors"[MeSH Terms] OR "SGLT2 inhibitor*"[Title/Abstract]) 
AND 
("Cardiovascular Diseases"[MeSH Terms] OR "cardiovascular outcome*"[Title/Abstract])

加えて、「Meta-analysisに絞りたい場合はPublication Typeフィルターを使うといい」といった補足も返ってきます。

考える間もなく、最適な検索式の「案」が得られます。
特に「初めて調べる領域」や「専門外のテーマ」で威力を発揮します。完全な時短ツールではありませんが、ゼロから考える苦痛からは確実に解放されます。

実際の使い方(ステップ形式)

ここでは、私が実際に使っている流れを紹介します。

Step 1: ChatGPTでPubMed検索式GPTを開く

ChatGPTにログイン後、GPTストアで「PubMed検索式GPT」を検索して起動します。

Step 2: 研究テーマを日本語で入力

プロンプト例:

慢性腎臓病(CKD)ステージG3以降の患者における、
植物性タンパク質摂取と腎機能低下速度の関連を調べたい。
観察研究とRCTの両方を含めたい。

ポイントは:

  • 対象集団(CKDステージG3以降)
  • 介入/曝露(植物性タンパク質)
  • アウトカム(腎機能低下速度)
  • 研究デザインの希望(観察研究+RCT)

を明確にすること。PICOフォーマットを意識すると、より精度の高い検索式が返ってきます。

Step 3: 返ってきた検索式を確認

GPTが返す検索式例:

("Renal Insufficiency, Chronic"[MeSH Terms] OR "chronic kidney disease"[Title/Abstract] OR "CKD"[Title/Abstract])
AND
("Proteins, Plant-Based"[MeSH Terms] OR "plant protein*"[Title/Abstract] OR "plant-based protein*"[Title/Abstract])
AND
("Kidney Function Tests"[MeSH Terms] OR "renal function decline"[Title/Abstract] OR "GFR decline"[Title/Abstract])
AND
("Observational Study"[Publication Type] OR "Randomized Controlled Trial"[Publication Type])

Step 4: PubMedで実際に検索

  1. 返ってきた検索式をそのままコピー
  2. PubMedの検索窓にペースト
  3. 検索実行

ヒット数が多すぎる/少なすぎる場合は、GPTに「ヒット数が2万件だった。もう少し絞り込みたい」と追加指示を出せば、調整案を提案してくれます。

Step 5: 人間の目で最終チェック

ここが最重要です。

  • MeSH termが本当に正しいか、PubMedのMeSH Databaseで念のため確認
  • 自分の研究テーマに重要なキーワードが抜けていないか
  • 検索式の論理構造(ANDとORの位置)は適切か

完全に信頼せず、「叩き台をもらった」というスタンスで臨んでください。

よくある失敗と注意点

実際に使ってみると、いくつか注意点があります。

失敗1: そのまま鵜呑みにする

「GPTが作った検索式だから完璧だろう」と思い込み、そのまま使ってシステマティックレビューを進めた結果、重要な論文を見逃していた――というケースも無きにしも非ずです。

対策:
必ず手動でMeSH Databaseを確認し、主要論文がヒットするかテストしてください。「この分野で絶対引用される論文」を1〜2本ピックアップして、その論文が検索結果に含まれるか確認する方法が有効です。

以前の投稿で医療者が生成AIを使用する際の注意点についてまとめましたのでぜひご一読してください。

失敗2: MeSHのズレ

GPTは2023年頃までの学習データをもとに生成しているため、最新のMeSH term更新に対応していないことがあります。また、似た概念のMeSH termを取り違えることも。

例えば、「gut microbiome」と入力したときに:

  • 正しくは「Gastrointestinal Microbiome」
  • GPTが「Microbiota」と返すことがある

どちらも関連はしていますが、検索範囲が変わります。

対策:
GPTが提案したMeSH termをPubMedで検索し、「Scope Note(定義)」を読んで意図通りか確認してください。

失敗3: 論文の取りこぼしリスク

検索式が厳密すぎると、重要な論文を見逃す可能性があります。特に:

  • MeSH termが付与されていない新しい論文
  • タイトル・抄録にキーワードが含まれない論文
  • 意外な用語で記述されている論文

対策:
検索式を「MeSH terms」と「Title/Abstract」の両方を含む形にする(GPTは通常これをやってくれますが、念のため確認)。また、感度(sensitivity)と特異度(specificity)のバランスを意識し、最初は広めに取ってから絞り込む戦略も有効です。

失敗4: プロンプトが曖昧すぎる

「がんの論文を探して」のような抽象的な指示では、GPTも困ります。返ってくる検索式が漠然としすぎて使えません。

対策:
前述のPICOフォーマットを使い、できるだけ具体的に伝えてください。

医師・研究者目線での現実的な使い方

ここまで読んで「結局、完全自動化じゃないんだな」と感じた方もいるでしょう。その通りです。

「完全自動化」ではなく「補助ツール」という位置づけ

PubMed検索式GPTは、あくまで検索の出発点を楽にするツールです。

  • 論文検索のゼロ→イチの段階を短縮
  • MeSH termの候補出しを効率化

一方で:

  • 最終的な検索式の責任は検索者が負う
  • 重要論文の見落としリスクは検索者がカバーする
  • 研究の文脈に応じた微調整は不可欠

私自身、検索式を作りたいときはGPTで叩き台を作り、その後手動で調整しています。
それでも一から作成するよりかは十分時間短縮されていると思います。

どんな人に向いているか

  • PubMed検索に慣れていない研修医・大学院生
    MeSH termの存在すら知らなかった、という段階の人には学習教材としても有用です。GPTが提案する検索式を見ることで、「こういう構文にするのか」という感覚が身につきます。
  • 専門外の領域を調べる必要がある医師
    例えば、消化器内科医が循環器領域の論文を探すとき、どのMeSH termを使えばいいか迷います。GPTはその第一歩を示してくれます。
  • 論文検索の時間を少しでも減らしたい多忙な臨床医
    完璧を求めず、「まずは叩き台を作ってもらう」という割り切りができる人に向いています。

まとめ:PubMed検索式GPTを使って時短しよう

PubMed検索式GPTは、論文検索の「ゼロから考える苦痛」を減らす補助ツールです。完璧ではありませんが、使い方次第で研究効率を大きく改善できます。

結論の整理

  • PubMed検索式GPTは、ChatGPT内の論文検索特化ツール
  • MeSH termを含む検索式を数秒で生成してくれる
  • ただし鵜呑みは厳禁。必ず人間が最終確認する
  • 「完全自動化」ではなく「出発点の効率化」と捉える

論文検索に費やす時間を削って、論文を読む時間や、家族と向き合う時間に充てたいもの。PubMed検索式GPTは完璧なツールではありませんが、「検索式を作る」という地味で時間のかかる作業を少しでも楽にしてくれる、医師・研究者にとって心強い味方です。

まずは騙されたと思って、一度使ってみてください。

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