安楽死が合法な国で起こっていることは?安楽死が合法化している国は?2025年最新情報まとめ

医学

安楽死の合法化には議論の余地があり、国によって認可されているかは異なります。そこで今回は安楽死が認められている国や地域を一覧にしました。制度が始まった時期や安楽死の条件、年間あたりの件数なども合わせて記載していきます。

安楽死が合法化している国はどこ?

【安楽死(積極的安楽死と医師幇助自殺)が認められている国・地域】
1. オランダ
2. ベルギー
3. ルクセンブルク
4. カナダ
5. オーストラリア
6. ニュージーランド
7. スペイン
8. コロンビア

【医師幇助自殺のみが認められている地域】
1. スイス
2. アメリカ合衆国の一部の州

安楽死が合法化している国で認められていることは?

安楽死には以下の3種類があり、それぞれの国によって認めている安楽死の種類も異なる。

1. 積極的安楽死(active euthanasia)
医師が致死薬を直接投与し、患者の生命を終わらせる行為。患者の意思に基づいて行われるが、実施国は限られている。

2. 医師幇助自殺(physician-assisted suicide)
医師が患者に致死薬を処方し、患者自身がそれを服用することで死に至る方法。医師は薬の提供までを行い、投与は患者自身の判断に委ねられる。

3. 消極的安楽死(passive euthanasia)
延命治療を中止することで、病状の自然な進行によって死に至らせる方法。人工呼吸器の取り外しや、治療の見送りが含まれる。多くの国で合法とされ、医療倫理や患者の意思に基づいて判断される。

日本では、消極的安楽死のみが事実上認められている。

安楽死が合法な国で起こっていることとは

安楽死(積極的安楽死と医師幇助自殺)が認められている国・地域

1. オランダ

  • 合法化年:2002年に「安楽死法」を合法化。法律上、積極的安楽死(active euthanasia)と医師幇助自殺(physician-assisted suicide)の両方が認められている。
  • 条件:患者の決断が完全に自発的な意思であること、生きることが「改善の見込めない耐え難い苦痛」となった、あるいは今後そうなると予想されること、そして安楽死以外に「合理的な代替策がない」ことを医師に認めてもらう必要がある。 さらに別の医師が独立の立場から同意することも義務付けられている。(参考:BBCニュース認知症患者の安楽死、過去の合意で可能に オランダ最高裁
  • 年間安楽死数:2023年には年間9,000人を超え、全死亡者の約5%が安楽死を選択しています。(参考:spaceshipearth.jp

2. ベルギー

  • 合法化年:2002年に「安楽死法」が成立。患者の明確な要請があれば、医師が積極的に生命を終わらせることが可能。法律上、医師幇助自殺は明確に記載されていないが、ベルギー安楽死審査委員会(Federal Control and Evaluation Committee)はこれを安楽死の一形態として扱っている。(参考: pmc.ncbi.nlm.nih.gov)
  • 条件:患者が持続的かつ耐え難い肉体的または精神的苦痛を経験し、治癒の見込みがない場合。患者の自発的かつ反復的な要請が必要。成人または法的に独立した未成年であり、判断能力があること。2014年には 条件付きで未成年の安楽死も認められるよう法改正された。また担当医は、少なくとも1人の独立した医師と相談し、患者の状態についての医学的評価と意見書を得る必要がある。患者が書面で要請してから、最低1ヶ月の待機期間を設ける
  • 年間安楽死数:2002年の合法化以降、安楽死の件数は年々増加している。2023年までの報告によると、ベルギーでは累計33,647件の安楽死が実施された。(参考: medrxiv.org)

3. ルクセンブルク

  • 合法化年:2008年に「安楽死法」が成立。2009年に合法化。積極的安楽死(active euthanasia)と医師幇助自殺(physician-assisted suicide)の両方が認められている。
  • 条件:成人であり、判断能力があり、意思を表明できる状態で、事故や疾病の結果として改善の見込みがない場合。また持続的かつ耐え難い肉体的または精神的苦痛を伴っていること。(参考: sante.public.lu)
  • 年間安楽死数34件の安楽死が報告され、これは過去最高の件数となった。

4. カナダ

  • 合法化年:2016年に「医師による死の援助(MAID)」が合法化。積極的安楽死(active euthanasia)と医師幇助自殺(physician-assisted suicide)の両方が認められている。
  • 条件:成人であり、判断能力があること。患者自身が自発的に、十分に熟慮した上で安楽死を要請し、その意思が外部からの圧力によるものではないこと。深刻かつ治癒不可能な病状に苦しんでいること。身体的または精神的な耐え難い苦痛を経験しており、その苦痛が緩和できないこと。主治医と独立した第二の医師の両方が、患者の状態と要請の適格性を確認し、承認すること。
  • 年間安楽死数:年々増加しており、2023年には15,343人がMAIDを選択しており、前年と比較して15.8%の増加となった(japancanadatoday.ca)。

    以下の記事によると、特定の一部の医療者による安楽死の偏りが懸念されていたり、医師の解釈の裁量が大きい点が依然として議論の余地があるとのことです。
記事:2人同意すれば黄泉の世界へ扉開く医師 年間1万5千件以上安楽死 裁量に偏りはないのか 安楽死「拡大の国」カナダ(2)

5. オーストラリア

  • 合法化年:1995年に世界に先駆けて、「医師による患者の積極的安楽死並びに自殺幇助」を認める「終末期患者の権利法が成立し、1996年7月1日から施行されたが、北部準州における安楽死法を無効にする連邦法「安楽死の法律に関する法(Euthanasia Laws Act 1997(Cth))」の成立によって、施行から9か月でその効力を失った
    その後、安楽死合法化に向けて多くの法案が各州で出されたが、いずれも議会を通過することなかった。
    2017年に北部準州の法律無効から20年の歳月を経てビクトリア州で自発的幇助自死を認める安楽死法がオーストラリアで唯一州法として成立した。その後他の州でも自発的幇助自死が順次合法化した。
  • 条件:18歳以上で、オーストラリアの市民権または永住権を持ち、申請前に該当する州に一定期間(通常12か月以上)居住していること、末期疾患を患い、耐え難い苦痛を経験していること、余命が6ヶ月以内(特定の疾患では12ヶ月以内)と予測されることが条件となる。
    決定には主治医と独立した第二の医師による評価と承認が必要。申請から最終承認までに一定の待機期間が設けられている。
  • 年間安楽死数:オーストラリア全体でのVADの利用は増加傾向にある。2019年6月から2024年6月までに、9,100人以上がVADの評価プロセスを開始し、そのうち約3,840人がVADを通じて亡くなった。ビクトリア州では1,282人、クイーンズランド州では1,140人、NSW州では398人がVADを選択している。
    オーストラリア研究34号eleminist.comtheaustralian.com.au

6. ニュージーランド

  • 合法化年:2019年に制定された「End of Life Choice Act 2019」は、2020年10月の国民投票で賛成多数を得て、2021年11月7日に施行された(asahi.com)。
  • 条件:18歳以上でニュージーランドの国籍または永住権を持っていること。治療の余地がなく、余命6ヶ月以内と宣告されている末期患者であること。耐え難い肉体的苦痛があること。ただし精神的・肉体的な障害や認知症、加齢のみを理由に申請することはできない。
  • 年間安楽死数:法律施行後、2021年11月から約半年間で92人が安楽死を選択した(tewhatuora.govt.nz)。 またニュージーランド保健省は四半期ごとに「Assisted Dying Service」のデータを公開している(tewhatuora.govt.nz)。

7. スペイン

  • 合法化年:2021年3月に安楽死法が可決され、同年6月から施行された(cnn.co.jp)。
  • 条件:成人であること。スペイン国民、またはスペインに合法的に居住していること。回復の見込みがなく、耐えがたい苦痛を伴う重い慢性疾患や末期状態にあること。安楽死の意思決定が自発的かつ十分に熟慮されたものであり、外部からの圧力によるものではないこと。手続きとしては患者からの正式な要請の後、医師による評価と承認が求められ、独立した委員会による審査が行われる。
  • 年間安楽死数:2023年には、スペインで766人が安楽死を申請し、そのうち334人(約43%)が実際に安楽死を受けた。これは前年度と比較して約25%の増加となっている(cadenaser.com)。法施行以来、累計で1,515件の申請があり、697件の安楽死が実施された。申請者の多くは70~79歳で、主な疾患はがんや神経疾患である。スペインにおける安楽死の実施は、主に公立病院や在宅医療の現場で行われている。

8. コロンビア

  • 合法化年:1997年に憲法裁判所が終末期患者に対する安楽死を非犯罪化し、2021年7月には終末期でなくとも、耐え難い肉体的・精神的苦痛を伴う患者にも適用範囲が拡大された(kirishin.com)。
  • 条件:成人であること。コロンビア国民、またはコロンビアに合法的に居住していること。回復の見込みがなく、耐え難い肉体的または精神的苦痛を伴う重篤な疾患や状態にあること。安楽死または医師幇助自殺の意思決定が自発的かつ十分に熟慮されたものであり、外部からの圧力によるものではないこと。
  • 年間安楽死数:コロンビアでは、1997年の合法化以来、2021年までに124人が安楽死を受けたと報告されている(newsweekjapan.jp)。しかし、最新の年間実施件数に関する公式データは公開されていない。安楽死の合法化から時間が経過しているものの、実際に手続きを受ける人の数は比較的少ないとされている。コロンビアは、ラテンアメリカで唯一、安楽死と医師幇助自殺の両方を合法化している国であり、患者の尊厳ある死を選択する権利を認めている。

医師幇助自殺のみが認められている地域

1. スイス

  • 合法化年:スイスでは、特定の法律で医師幇助自殺を明確に合法化しているわけではないが、刑法の解釈により、利己的な動機でなければ自殺幇助は罰せられないとされいる。
  • 条件:患者の自発的かつ明確な意思表示が必要。
  • 最新の年間実施数:2017年末には、医師幇助自殺による死亡者が1,000人を超えた( eleminist.com)。

2. アメリカ合衆国の一部の州

  • 合法化年:オレゴン州では1997年に「尊厳死法(Death with Dignity Act)」が施行され、その後、カリフォルニア州、コロラド州など他の州でも順次合法化が進んだ。
  • 条件:末期疾患を患い、余命が6ヶ月以内と診断された成人患者であり、患者の自発的かつ明確な意思表示が必要。
  • 最新の年間実施数:オレゴン州では、2021年に383人が医師幇助自殺の処方を受け、そのうち238人が実際に薬物を使用して死亡した。

安楽死が合法化している国に日本は入っていない

以上、安楽死を認めている国や地域とその実情でした。各国で議論が活発になっている安楽死ですが、日本で導入される見込みは現状ありません。が、社会保険制度の限界が叫ばれている中、検討を避けては通れないのも事実としてあるかと思います。

導入するにしろしないにしろ、政治家任せにせずに、各国の実情を把握しつつ常にどういう形がベストなのかを自分事として議論していく必要がありそうですね。

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